米国、カナダ、ドイツ、イスラエルの4ヵ国20施設で、抗うつ剤による治療効果が十分でないハミルトンうつ病評価尺度(HDRS-21)の合計スコアが20点以上のうつ病患者に対して、登録症例数233例(実刺激群111例、シャム群122例)の無作為化二重盲検試験を実施しました。
患者さんに治療内容を盲検化するために、実刺激用のH1コイルとシャムコイルを内蔵したヘルメットユニットを使用しました。いずれのコイルでも刺激音と振動が同様に発生するよう専用設計されています。さらにHDRS-21等の精神学的評価判定は、治療実施者とは独立した評価者が行うことで、評価の盲検化も行いました。
運動閾値(MT)の1.2倍の磁気刺激を週5日で4週間行い、その後一定の治療効果を認めた患者さんには続けて週2日で12週間(計16週)行いました。1回あたり18Hzを2秒間、非刺激時間を20秒とするサイクルを約20分(55サイクル)実施しました。
患者さんは平均年齢40歳台で、初発年齢は平均26歳、現症状の罹病期間は平均約20ヵ月で、群間に違いはありませんでした(p>0.05)。
主要評価項目とした5週後のHDRS-21スコア調整済み変化量は実刺激群-6.4で、シャム群-3.3に比べて統計的に有意な改善がありました(p<0.05)。
実刺激群の5週後の寛解率は32.6%、奏効率38.4%で、シャム刺激に対して有意な改善がみられました。
5週後に平均13.9±7.6であったHDRS-21スコアは、16週後には平均8.5±5.3まで低下し、また、16週の寛解率は31.8%、奏効率は44.3%でした。治療を継続することによりうつ症状の改善を長期的に維持できる可能性が示唆されるものの、5週以降はプロトコルによる治療中止や、同意撤回が多いことから、維持療法の効果については今後さらなる研究と検討が必要であると考えられます。
頻度の高い有害事象として、実刺激群で頭痛47.2%(51/108例)、刺激部位の疼痛25.0%(27/108例)、刺激部位不快感19.4%(21/108例)、顎痛10.2%(11/108例)があり、頭痛を除く3事象はシャム群より有意に発現頻度が高いという結果でした(p<0.05)。実刺激群で発生した頭痛、顎痛、刺激部位の不快感及び刺激部のほとんどは回復又は軽快しており、重篤と判断された事象はありませんでした。
重篤な有害事象として痙攣が1例ありました。rTMS治療において、アルコール摂取と痙攣発作の関連は既に指摘されており、本事象も治療前日のアルコール摂取が原因と考えられています。
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